エンディングノートには、「遺言書の有無や保管場所」を書く欄があります。「遺言書の存在」を家族に伝えることは、適切な手続きにつなげるという重要な役割があります。
この記事では、遺言書ついて、エンディングノートに何を記載しておくとよいのかを解説します。
なぜ遺言書の有無について書くのか
遺言書があれば、原則としてその内容に沿って相続手続きを進めることになります。一方、遺言書がない場合は、相続人同士で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行うことがあります。そのため、まずは遺言書があるのかないのか、そして、ある場合には家族がその存在を把握し、見つけられることが重要です。
では、遺言書があるにもかかわらず、その存在に気付かずに遺産分割協議を行い、財産の分配まで終えた後で遺言書が見つかった場合はどうなるでしょうか。
遺言書の内容や遺産分割協議の状況などによって扱いは異なりますが、遺言書の内容に沿った対応が必要になる可能性があります。せっかく相続人同士で話し合って決めた内容を、見直さなければならなくなることもあるのです。
さらに、遺言書が見つかる前に、分配された財産が第三者に売却されるなど、処分されていた場合はどうでしょうか。第三者が事情を知らずに財産を取得している場合などには、その取得が法律上保護されることもあり、財産を元の状態に戻すことが難しくなる可能性があります。
また、遺言書が見つかった場合でも、必ずしもその内容どおりに財産を分けなければならないとは限りません。一定の条件のもと、相続人などの関係者が合意することで、遺言書とは異なる分け方が認められる場合もあります。ただし、遺言によって財産を受け取る人がいる場合など、関係者の権利にも配慮する必要があるため、単純に相続人同士の話し合いだけで決められるとは限りません。
このように、遺言書の存在に気付かないまま相続手続きを進めると、後から手続きの見直しや親族間のトラブルが生じるおそれがあります。こうした事態を防ぐためにも、遺言書を作成した場合は、その存在や保管場所などの情報が家族に伝わるようにしておきましょう。
遺言書・相続について書くときのポイント
エンディングノートは、生前に第三者の目に触れる可能性がゼロではありませんので、遺言書を自宅で保管している場合、その保管場所をエンディングノートに書いてしまうことで、意図しない形で内容を知られてしまうおそれもあります。
かといって、保管場所が全く分からないと見つからずに遺産分割が行われる可能性もあります。
保管場所を具体的に書くかどうかは、ご自身の状況に応じて判断が必要です。少なくとも、家族が遺言書の存在に気付けるような手がかりは残しておきたいところです。
最低限書いておきたい項目
家族が遺言書の存在を把握し、適切な手続きにつなげるために、最低限以下の項目を分かる範囲で記載しておくと安心です。
このページには「相続の希望」を書くこともできますが、希望については前述のとおり法的な効力はありません。そこで以下では、家族が遺言書を見つけて適切な手続きにつなげるために、最低限記載しておきたい「遺言書の情報」をご紹介します。
遺言書の有無
「ある」か「ない」かを明記します。「ある」場合だけでなく、「ない」と分かれば、家族は無駄に遺言書を探し回る必要がなくなり、それだけで確認の助けになります。
遺言書の種類・形式
「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」など、どの形式かによって家族のその後の初動が変わるため、中核となる情報です。それぞれ保管場所や確認方法が異なるため、どの種類の遺言書を残しているのかを遺族に示しておかないと、家族はあちこちに問い合わせて探す必要がでてきます。
保管場所または探索先
「自宅の書斎の引き出し」など、どこにあるか、あるいはどこに問い合わせればよいかの具体的な導線を示します。
公正証書遺言の場合、手元に保管している「正本」と「副本」の保管場所を記載しておくと家族の確認の助けになります。
自筆証書遺言の場合は、法務局での遺言書保管制度を使っている場合それも記載しましょう。
作成年月日
複数の遺言書が存在する場合は、作成年月日が重要な手がかりになります。万が一、古い下書きや複数の遺言書が見つかった際、家族が「これが最新版だ」「より新しい遺言書がないか確認しよう」と判断するための大切な情報です。
書いてあると、さらに家族の助けになる情報
基本の項目に加えて、さらに書き残せるゆとりがある場合は、以下のような情報を備考欄やフリースペースに添えておくと、家族の手続き負担を減らす参考になる場合があります。
遺言執行者の有無と連絡先
遺言の内容を具体的に実行する人(遺言執行者)があらかじめ決まっている場合は、その方の氏名と連絡先を書いておきましょう。その後のやり取りがスムーズになります。
相談・依頼した専門家の情報
遺言書の作成をサポートしてもらった行政書士、弁護士、司法書士などの「氏名・事務所名・連絡先」です。手続きで困ったときに、家族が相談先を検討する手がかりになります。
エンディングノート「遺言書」の記載例
ノートのスペースに書く際の、シンプルな記入例をご紹介します。
【遺言書の記録】
- 遺言書の有無: あり
- 遺言書の種類: 公正証書遺言
- 遺言執行者: 長男 〇〇〇〇(遺言書で指定)
- 保管場所:正本・副本は自宅書斎の茶色のファイル。(原本は公証役場で保管)
- 作成年月日: 2025年10月15日
【遺言書の記録】
- 遺言書の有無: あり
- 遺言書の種類: 自筆証書遺言
- 遺言執行者: 長男 〇〇〇〇(遺言書で指定)
- 保管場所:法務局に保管
- 作成年月日: 2025年11月15日
まとめ
エンディングノートの遺言書のページは、家族が遺言書を見つけ、正しい手続きへ進むための架け橋として、非常に大切な役割を持っています。
「遺言書があるのかないのか」「どの種類の遺言書なのか」「どこを探せばよいのか」という手がかりは、家族にとっては大きな助けになります。
詳細な手続きの手順や個別の法的な判断については、状況によって異なります。必要に応じて専門家へ相談しながら進めましょう。遺言書の情報を整理して残しておくことは、残された家族の負担を減らす大切な備えになります。
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